アバターのヒットで火が付いた「第三次3Dブーム」
映画のみならず様々な商品に波及した様子はまさに“ブーム”だったと思います。 
同時に、ブームと呼ばれる現象が起こるとなぜか「ブームは終わった」と言いたがる人が出てくるんですね。
今回の3Dブームに関しても、始まった直後から終わらせたがっていた人はいたように思います。

そんな、終わった終わったと言われ続けている3Dですが、特に消えてなくなるような事は無く現在に至っています。
しかし、少なくとも国内では、以前に比べて展開されているジャンルが減ってきたのは事実だと思います。

3Dブームは本当に終わったのか、考えてみたいと思います。

ご意見ご感想がありましたらコメント下さい。 

シネマトゥデイにこのような記事がありました。
ハリウッドの話です。
http://www.cinematoday.jp/page/N0046994 

2012年10月時点での記事ですが、ざっくりまとめると

2013年に公開される予定の3D映画は現時点で25本と横ばい

3D映画1本あたりの観客動員数が減っており、3D映画というだけで観客を集められていた時代は終わった

つまり3Dブームは終わった 

といった具合です。 

確かに、ただ3Dだからというだけで人が入る時代は終わったのでしょう。
ですけれど、3D映画の製作本数は、減っている訳では無く横ばい
それって本当に3Dブームが“終わった”と言えるのでしょうか

記事では次のように締めくくっています。

製作本数がこれ以上増えないことで、1本1本のクオリティーが上昇するのならば、ブームの終わりは映画ファンにとっても朗報といえるかもしれない。 

「これ以上増えない=ブームの終わり」というのはどうなんでしょう(^^;
結局は“ブーム”という言葉の定義の問題なのでしょうか。 

それから、“終わり”というネガティブな単語も、私が違和感を感じた理由の一つです。
確かにブーム的な事象は終わったのかも知れませんが、制作本数は減っていないという事からしても、終わったと言うよりもむしろ流行期から定着期に変わったと言えるのではないでしょうか。 


さて、日本の場合はどうでしょうか。

2010年の3D邦画は9本
2011年の3D邦画は16本
2012年の3D邦画は8本
(同時上映は1本として数えています。間違ってたら教えてください。) 

そして2013年は、
実写は「フラッシュバックメモリーズ」
それから「貞子3Dの続編」
そしてCGの「宇宙海賊キャプテン・ハーロック」も多分今年のはず。 

9本16本8本と来て、3本です

映画以外はどうでしょうか。
3Dスマートフォンは、2012年前半までに計10機種くらい発売されたと思いますが、今後の発売予定はありません。
3Dパソコンは、以前は偏光メガネかアクティブシャッターメガネでしたが、現在は裸眼かアクティブシャッターメガネです。
3Dモニターは、2012年末に三菱から新製品が出ました。
3Dテレビは、売り上げは良く無くとも減ってはいません。
3DHMDは2012年に新型も出て好調。
3DSはどうぶつの森などが絶好調です。
Blu-ray 3Dは、2011年66本の2012年77本。 増えてます。

確かに3D邦画の制作本数は減っていますが、それ以外の物については、 
生き残ったものと消えていったものとがあります。

生き残ったもの
3Dパソコンは、形を変えて生き残っています。
3Dモニター・テレビは変わらず、
3DSもまぁ変わっていないでしょう。
3DMHDは、初代が高く評価され、2代目に繋がりました。
映画に関しては、3DCG作品と、3Dの意図が明確だった貞子は残りました。
3DBDは増えています。 

消えていったもの
上手く存在価値を提示できなかった3Dスマートフォンは消えました。 
3Dを話題性作りの道具にしか考えていなかったような映画も消えました。

このような感じだと思います。
これを私は、“2週目に入った”と表現したいと思います。

2010年から2011年にかけては、明らかに3Dブームで、様々な3D商品が世に出ました。これを1週目とします。
そして2012年から緩やかに2週目に入り、1週目である程度の評価を得た物だけが生き残りました。 
そう考えれば納得がいきませんか?

ただ問題は、消えるべきでは無かったものもいくつか消えてしまった事だと思います。
例えば、偏光方式のノートパソコン。
YouTube3Dを見るのには偏光方式が最適だと思うのですが、現在ではノートパソコンは手に入りません。(モニターはありますが。)
3Dスマートフォンも、スマートフォンならではの3Dのあり方を示して生き残って欲しかった。

3D映画にしても、消えて当然のようなものと一緒に、残って欲しかったものも消えて行ってしまったように感じます。
ステレオDのアーロンさんの仰った事が、まさに今邦画の業界で起こっているのでしょう。

もし質の高く無いものを提供すれば、長期的に見て自分達の仕事を害する事になるし、3D産業そのものにダメージを与える。 

質の悪い3D映画、3Dに意味を感じられない映画がいくつも作られた結果、3D邦画は激減してしまいました。
「一命」「三丁目の夕日」など、ちゃんと作れば良い3D映画になり得たのではないかと思えるタイトルもあったのですが…。
「イナズマイレブン」も、ちゃんとしたクオリティで作り続けて欲しかった。

そういった具合に、
ハリウッド映画は“これ以上増えない”定着期に。
日本の場合は、淘汰されて2週目に。 
それぞれ状況は違っていると思います。


昨年8月、「ウインブルドン」が3D放送され話題になりました。日本以外で。
3D放送をした国は、ドイツ、英国、米国、スウェーデン、イタリア、オランダの6カ国で、パブリックビューイングが行われた国や地域はは22カ国以上あったとか。 
日本ではようやく今月WOWOWで放送があるようです。半年遅れ。

また、中国や韓国では、日本よりも3Dが盛んです。
アイアンマン3は、中国市場を開拓したいというハリウッドの意向もあり、米中合同制作なのだそうです。

日本は既に3Dで世界から遅れていますし、このままだとますます差は開くでしょう。
近年、ただでさえ映像機器・放送機器で韓国に押されているようですが、3Dの遅れはそれに拍車をかける事になるのではないでしょうか。

ソニーもシャープもパナソニックも業績不振で、国産3Dコンテンツも減少。
パナソニックに至っては、インターナショナルCESにて脱テレビ依存を宣言する等とも言われています。
このままでは絶対にマズい。
日本国内の状況だけを見てドヤ顔で「3Dブームは終わった」などと言っていたら日本が終わってしまうのではないか。
そんな風に思う今日この頃です。